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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)8497号 判決 1985年6月28日

甲事件原告、乙・丙事件被告(以下、原告という。)

石川丈二

右訴訟代理人

島田徳郎

滝沢幸雄

甲事件被告(以下、被告という。)

多久島重信

右訴訟代理人

松島英機

甲事件被告、乙・丙事件原告(以下、被告という。)

白鳥貞市

右訴訟代理人

五三雅彌

丙事件被告(以下、被告という。)金永大こと

金山勲

丙事件被告(以下、被告という。)金洪基こと

原弘光

丙事件被告(以下、被告という。)

林聖宝

丙事件被告(以下、被告という。)

高貞圭

丙事件被告(以下、被告という。)

林信晴

丙事件被告(以下、被告という。)

林重富

丙事件被告(以下、被告という。)

林邦成

丙事件被告(以下、被告という。)林薫こと

川島薫

右八名訴訟代理人

亀岡孝正

高瀬迪

主   文<省略>

理由

一丙事件について

1、2<省略>

3  <中略>

そして、<証拠>によれば、被告金山は、昭和三六年七月二八日頃訴外国峰に対し本件土地建物を代金二五〇万円で売却し、同訴外人は右同日さらにこれを被告多久島に代金三六九万六七〇〇円で売却し、同被告は右訴外人及び被告金山の同意を得て、訴外国峰を省略して直接被告金山から被告多久島へ別紙登記目録(一)記載の仮登記をなしたこと、被告多久島は、昭和三六年九月一日に被告白鳥に対し本件土地建物を金四七八万円で売却し、別紙登記目録(二)記載の付記登記をなしたことが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。<中略>

ところで、右認定の事実によれば、被告金山と訴外国峰、同人と被告多久島、同被告と被告白鳥との間の契約はいずれも売買契約であつて、売買契約の予約ではないから、本件土地建物の所有権はそれぞれ移転しているものと解すべきであり、したがつて、仮登記としては不動産登記法二条一項の仮登記をなすべきであるところ、本件においては中間省略により被告金山から被告多久島に対し売買予約を原因とする同条二号の仮登記をし、同被告から被告白鳥に対しては右仮登記に基づく所有権移転請求権移転の付記登記をしているので、その登記の効力が問題となる。

しかしながら、右一号の仮登記も二号の仮登記もいずれも後になされる本登記の順位を保全するためになされるものであり、所有権に関する仮登記はその原因とされた権利関係の公示を目的とするものではないから、仮登記によつて公示された権利関係と実体上の権利関係との間に右のような相異があつても、その申請が受理されて仮登記がなされた以上、これを無効とするのは相当でない。

したがつて、被告金山及び訴外国峰の同意を得て被告金山から被告多久島に直接なされた別紙登記目録(一)記載の仮登記及び右仮登記についてなされた同目録(二)記載の付記登記はいずれも有効であると解すべきである。<中略>

二乙事件について

1、2<省略>

3  ところで、右事実からすると、被告白鳥は、本件建物については別紙登記目録(二)記載の登記を有しているにすぎないところ、右登記のままでは本件建物の所有権取得を原告に対抗することはできず、したがつて、原告に対し本件建物の即時明渡しを求める請求はその限りでは失当であるといわざるを得ない。

しかしながら、仮登記には順位保全の効力があるから、右被告が、別紙登記目録(一)記載の仮登記に基づいて所有権移転の本登記を経由するに至つた場合には、原告に対し、本件建物の明渡しを求め得るのであり、しかも、右被告は本件と併合されている丙事件において、本登記義務者である被告金山に対し右仮登記に基づく本登記手続を求めるとともに、右本登記をなすについて利害関係人である原告及び丙事件その余の被告に対し右本登記をなすことの同意を求めていることからすれば、被告白鳥は原告に対する即時明渡しが認められない場合には、予備的に仮登記に基づく本登記をしたことを条件とする将来の明渡しを求めているものと解するのが相当である。

そして、被告白鳥の被告金山に対する右本登記請求及び利害関係人らに対する右本登記をなすについての承諾請求が理由があることは丙事件について判示したとおりである。

してみれば、被告白鳥の原告に対する請求は、本件建物について右に述べたような将来の明渡しを求める限度において理由があるが、その余は失当というべきである。

三甲事件について

1、2<省略>

3  右事実からすれば、原告の被告多久島及び同白鳥に対する本件各抹消登記請求はその余について判断するまでもなく、いずれも理由がない。

ただ、原告の被告白鳥に対する本件建物の明渡請求については、同被告が別紙登記目録(二)記載の登記を有しているにすぎず、右登記のままでは本件建物の所有権取得を原告に対抗できないことからすれば、原告の被告白鳥に対する右請求はこれを認容すべきようにも思料される。

しかしながら、同被告は、本件の反訴(乙事件)として原告に対し本件建物の明渡しを求めており、同被告の右請求は本登記手続を経ることを条件として認容すべきであること前判示のとおりであるから、このような場合には、結局原告の被告白鳥に対する本件建物の明渡請求も失当として棄却するのが相当であると判断する。<以下、省略>

(裁判官高田健一)

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